クラシック指揮者比較

「指揮者なんて誰が振っても同じだよ」なんて思ってる人向けに
良い演奏はないかとニコニコ動画を探していたのですが、見つけました。
ドヴォルザーク交響曲9番「新世界より」第4楽章です。

ひとつはベルリンフィルの先々代音楽監督、帝王カラヤン
http://www.nicovideo.jp/watch/sm569643

もうひとつは私が最も敬愛する指揮者、チェリビダッケです。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm500477

とりあえず仕事のBGMがてらでも良いので両方通して聞いてください。



出だしはカラヤンのほうが良いですね。
颯爽として軽快、「新世界」という音楽に求める
勇壮な雰囲気にぴったりと合った演奏です。

それに引き換えチェリビダッケのほうは丁寧ではあるものの
どこかモッサリとして引きずるような感じがあります。

しかし、だからといってチェリビダッケのほうが
劣っているというわけではありません。
中間部の静かなところを聞いてみましょう。


クライマックスが終わって静かになったところ、
カラヤン(6:15〜)では、それまでの流れを引き継いで
静かに優しく、小川の流れのようなよどみのない音楽を続けます。

それに比べてチェリビダッケ(7:04〜)を聞くと、
なんと暗く沈んでいること。まったく同じ音楽には聞こえません。
遠く離れた新世界アメリカから、祖国のチェコスロヴァキア
懐かしく思うドヴォルザークの慟哭が聞こえてきそうです。


比喩的ではなく理性的に解釈すると、
カラヤンがメロディの流れに重視を置くのに対して、
チェリビダッケは一つ一つの楽器が奏でる音色や旋律
そしてそれぞれの楽器が重なることによる和音の妙を
いかに美しく響かせるかということを重視しているのです。

ここまで聴いたところで、最初から聴きなおしてみてください。
チェリビダッケの演奏は、弦楽器や金管楽器、管楽器、
そしてティンパニーにいたるまで、全ての楽器が
クリアに響いていることに気が付くと思います。

それに比べてカラヤンはメロディと伴奏だけ、
悪い言葉で言ってしまえば映画音楽的に響くと思います。


この動画に興味を持っていただけたら、
ついでにチェリの第二楽章を聞いてみてください。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm505848

「遠き山に日は落ちて」、帰りの音楽として有名な旋律ですが
チェリの演奏だと、家に帰るどころが子供が怖がって泣き出しそうな
ゾッとする怖い演奏です。

ひとつひとつの楽器が絡み合って、大きな山を作っていく過程を
ぞんぶんに楽しんでください。

……こないだまでカラヤンの第二楽章もあったんだけど
消されちゃったみたいだな。残念。こちらはこちらで
色気のあるロマンたっぷり演奏で、良かったんだけどね。